カンヌ映画祭のディレクター Thierry Fremaux が、フランスのラジオ「Europe 1」の中で、ラース・フォン・トリアーのカンヌへの帰還を歓迎する、とコメントした。賛否両論があるとはいえ、ある意味予期されていたともいえる展開だが、どうやらラース・フォン・トリアーはカンヌに戻ってくることが許されたようだ。
2011年にカンヌを追放されたラース・フォン・トリアー
2011年の同映画祭でヒトラーへの共感やナチス・ドイツを擁護する発言をし、カンヌを追放されてしまったラース・フォン・トリアー。当時は、生涯カンヌへの出入り禁止になるとの憶測も流れていた。
また、ハリウッドを中心に起きた一連のセクハラ問題の流れの中で、パルムドールを獲得した作品『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の撮影中にラース・フォン・トリアーからセクハラ被害にあったというビョークからの告発もあり(トリアーはセクハラを否定している)、トリアーに対する世間の評価も傷ついてしまった。そうしたこともあり、トリアーはもうカンヌには戻れないのではないかという憶測が強まっていたのだ。
そうした中、今回、ディレクターのFrémaux が『カンヌ映画祭の実行委員長Pierre Lescureは、ここ数日の間、5年前に出入り禁止になった人物に対する処分を解除するために身を粉にして働いている。映画祭に参加するチャンスをもう一度彼に与える時間が来たと思うんだ』とコメントをしたのである。
フランスのウェブサイト Wask.Fr.に公開された記事による(もうその記事は削除されてしまったが)と、カンヌ映画祭の実行委員たちの中でも、ラース・フォン・トリアーを映画祭に復帰させるかどうか白熱した議論があったそうだ。特に、セクハラ疑惑については双方の主張が分かれており、真実がなんであるかは誰にもわからず、彼の無罪が証明されたわけでもない。
当初、トリアーに対して「コンペには参加しない」という条件での復帰を打診したものの、トリアーはこれを拒否。彼を復帰させたい実行委員たちは、この反応に頭を悩ませることになったという。
トリアーの新作『The House That Jack Built』は2018年末に公開予定
ラース・フォン・トリアーの新作『The House That Jack Built』はマット・ディロンとユマ・サーマンを主演に迎えたシリアル・キラー(連続殺人犯)の話。トリアーの復帰を示唆したラジオの中で、Fremauxはトリアーがカンヌに戻ってくることを数日中に公表する予定だと述べたそうだ。
また、トリアーは『House That Jack Built』の製作中にもかかわらず、他のプロジェクトにも手を出してしまったらしい。どうやら、『Études』と名付けられた、10本のショート・フィルムを作成するプロジェクトもすたーとしたようだ。
同じラジオの中でFremauxは、昨年のカンヌに『ラブレス』で参加したロシア人映画監督アンドレイ・ズビャギンツェフが今年の審査員になると発言。その他の審査員はケイト・ブランシェットによって選出されるが、まだ全審査員の発表には至っていない。